組立段階の試練
こんにちは、片桐茂夫です。
先週、ワン・ドリンク自販機の全体試作第一号機で、
センサ本体部分を組み立てましたが
なかなかうまく動作せず、少々苦戦しました。
若手を育てる良い機会なので、
出来るだけ、立ち入らずに
担当者たちに任せるようにして
状況報告を受けているものの
ちょっと気がかりで、観察していました。
★ 混乱を招く組立段階
どうしても、新しい開発品の組立段階は、
トラブルが発生しがちでその時、
若い技術者の冷静な判断力が試されることになります。
なぜ、技術者の冷静な判断力が試されるのでしょうか?
組立前のひとつひとつの部品については、
その役割がハッキリしています。
光センサは、光を遮ると光電圧が低下するし
ロジック回路は、全ての条件を満足すれば
OK信号が出るしOK信号を受ければ、
ゲートが開くしゲートを開ければ、
カードが通過する ………
このように、ひとつひとつの部品は、それぞれ条件と
発揮すべき機能が決まっています。
それは、部品点数の多い・少ないに関わらず
複雑な機械であっても、単純な機械であっても同じです。
そして、部品レベルでは
条件と機能、言い換えれば、入力と出力が
単純明快であって、良し悪しが、はっきりしているので
決して、混乱は起こりません。
しかし、往々にして、これらの部品を組み立てて
性能試験を行うと、なかなか、うまく動きません。
うまく動かないと、経験の浅い技術者は、
いきなりパニックに陥るのです。
これまで、設計段階で冷静にロジックを組み立て
うまく動くはずだと、確信を持っていても
実際に、動かない現実を目の当たりにすると
これまでの冷静なロジックは一瞬で崩壊します。
そして、新たな原因を思いつくまま考え出して
そのあやふやな原因に、すべて責任転嫁して
手っ取り早い問題解決の結論を出して
気持ちの上で、楽になろうとします。
しかし、そんなことをしても、
ウソの原因では問題は解決しないので、
やはり、対策後の性能試験でもうまく動かず
再びパニックになってしまいます。
そして、このプロセスをいつまでも繰り返します。
かなり誇張して説明しましたが
組立段階では、こんな混乱が、
多かれ少なかれ、発生します。
それは、部品レベルでは、問題は単純ですが
組立段階では、全ての部品の問題と
それぞれを組み合わせたときの問題が集まって
問題は何十倍も複雑になり
頭の中が整理されていないからです。
★ 真因探しが解決への道
更に言えば
例えば、何か他人を怒らせるトラブルが発生したとします。
相手が人間の場合、時間が経てば気持ちが治まって
何もしなくても、問題解決する場合があります。
例えば、頭痛などの病気でも、自然治癒するかもしれません。
しかし、こと機械装置の場合
問題が自然に解決することは絶対にありません。
真因を探し、適切に対策することだけが解決への道です。
はじめの段階では、新たな原因は考えるべきではありません。
まずは、これまでの自分を信じて、
ひとつひとつ、丁寧に確認することが必要です。
大きくは2つです。
その1つは、部品に問題がある場合
もう一つは、部品の組み合わせに問題がある場合です。
組立状態で問題が発生すれば
全てをバラして
もう一度、部品単体の性能を確認します。
組立前に部品ごとに性能を確認しているので
普通、問題は無いはずですが
万一問題があれば、交換・修理します。
再度、組み立てて、やはり動かなければ
部品の組み合わせに問題があるはずです。
組立も、いきなり全体を組み上げるのではなく
出来るだけ細分化した部分組立の状態で
丁寧にチェックします。
部分組立で寸法関係が適切か?
性能が十分か?
動作に不具合が無いか?
今回の不具合も、部分組立で寸法調整の不十分が原因でした。
そして、真の原因さえ分かってしまえば
な~~~んだ!!!
ということで、パニックは一瞬で無くなり
笑顔が戻ります。
こうして、技術者の経験値が一段階アップします。
この混乱については、
因果関係と相関関係の違いを
認識しているかどうかということが
深く関わっていますが
それについては、次回ご紹介します。